岩田心霊研究所 清掃員の女(58)

ええ、知ってますよ。

毎日来てますし、ちょうど子供達の教室が終わってから西棟のあたりに行くので…。
普通の子でしたよ。
普通というか…良い子だったと思います、明るくて、たまに挨拶してくれたり。
いつも一緒にいる子の方は、挨拶どころか見向きもしなかったですからね。
その子はね、こんにちわ、とか…、そういう挨拶くらいですけどしてくれましたし。
やっぱり嬉しいもんですよ。挨拶って大事ですよねぇ。
たまに、ちょっと気味が悪く感じる時もありましたけど…でもそんなこと言ってたらここに掃除になんて来れませんから。
心霊なんとかって、そういう施設でしょ?
どういった研究してるのかは良くわからないですけど…。
でも、お給料は良いし、実際、病院で清掃してた時に比べたら天国ですよ。
本当に楽なんです。もともと綺麗だし。
気味が悪い…って、まあ、さっき言いましたけど、思い違いだったと思います。
あの子はいつもにこにこしてました。
やっぱり良い子だったとしか…。
さっき話した、友達の方なんかは、ツンとして…冷たい感じでしたから。
比べちゃうんですかね、そういう印象って。
確か、その友達の方が先にいなくなってるんですよ。
後を追ったのかしらねえ、なんて、私達は噂してたけど。
でも、2人とももう保護されて家に帰ったって話しも聞きましたよ? 違うの?
だってもう半月以上経ってるし…実際子供なんか行くとこないでしょ、家くらいしか。
お金も持ってないだろうしねえ。

名前?
いやだ…そういうのって話してもいいの?
勿論知ってますよ。
寮に住んでる子は少ないから。
私が言ったって、バレないんでしょ?
言わないでくださいね?

一之瀬洋平くんっていうんです。
友達?ああ、一之瀬くんの前にいなくなった方の子?小林真太郎くん。
そうそう。一之瀬くんの方は、あだ名がありましたよ。
ちょっと変なあだ名なんですけど…“ヒダリ”って。
ミギヒダリの左かしらね?
なんでそういう呼ばれ方してたのかまでは知らないですけど…。