1月7日の深夜、冷たい雨が降りしきる中。

彼は消えた。

そう…まるで初めから何も存在していなかったかのように、跡形も無く。
それとも… 嵐のように散々世界を巻き込んで、手当たり次第に破壊しながら。
いや… 沢山の大人たちの善意と悪意が波になり、彼を、彼自身も知らない遠い何処かへと押し流しているだけなのかもしれない。

何もわからない。
全てが想像でしかない。
だけど、理不尽じゃないか。
本当は、こんなにも近くにいるはずなのに。

それは小さな記事だった。

見開き546mm×812mmの中の、たった35mm×93mm。
13054文字の中の、たった191文字。

だけどそれは、ずっと昔からオレが探していたニュースだった。

オレがその記事を見つけた時、既に失踪から20日間が経過していた。
沢山の人間の、暖かくも冷たい胸の中を、転々と、彼は渡り歩いているのだろう。
今も?
この瞬間も?
オレはここにいるのに?
何故?

顔も名前も知らないその少年がつけた引っ掻き傷が、オレの身体中に残っていた。