前置き。
宵の森の向こうに魔女の村があった。
村はずれの丘で魔女たちが踊る。
悪魔やら魔物やら人間の男やら、次々とやってきては魔女たちと交わった。
毎日のように交わったから次から次へと子供ができた。
魔女たちは子供を産んだ。
産んだ先から首根っこをひねって息を止め、大鍋でぐらぐら煮て客たちにふるまった。


ある日、年取った魔女が気まぐれを起こした。

 この赤ん坊、育ててみよう。

魔女がつまみあげたのはちっぽけな男の赤ん坊。
赤ん坊はびゃあびゃあとよく泣いて、よく乳を飲んだ。
産みの親の乳はすぐに枯れてしまったがもらい乳には事欠かなかった。
この村の魔女たちはすぐ子供を産むから誰だっていつも乳が出るんだ。
年取った魔女の婆さんははりきって息子を育てた。
うるさく泣き喚けばほうきでぶっ叩き、子守唄を歌って、甘い乳をたっぷり飲ませる。
婆さん魔女はうまくやっていたよ。
それもそのはずだ、この婆さんは生き物を飼うことにかけては村でも一番の上手。
ノミやシラミだって懐いていたほどの腕前だ。
家や納屋には、めんどり、カササギ、カラスに大蜘蛛、コウモリ、黒ヤギ、猫、ねずみ。
みんなよく仕える出来のいい獣ばっかり。
馬だって狼だって飼おうと思えば飼えただろうさ。
餌を食わせるのが手間だから置かなかったけれど。
赤ん坊は見事に育って少年と呼べるにまでなった。
ぎらんぎらんの目ぇ見開いてニッタリと笑うよ。耳まで口にしてニッタリと。
毎日若い魔女たちの尻をひっぱたいたり、大事なヒキガエルの干物を盗み食ったり。
何かにつけちゃ悪さをするとんだイタズラ小僧さ。





「ィヤーッホィ!」




ちょいと見てみるかい?